肩こり
肩こりでお悩みの方は少なくありません。肩こりがひどくなると、頭痛や吐き気を伴うこともあります。
首は重い頭を、肩や背中は腕を支えているため、横になっていない限り絶えず大きな負担がかかっています。たくさんの筋肉が首から肩、背中にはありますが、うなじから肩や背中に大きく広がった僧帽筋が肩こりの原因になることが多いとされています。
原因
同じ姿勢を保っている場合、筋肉は緊張した状態が続いているため疲労によって強いこりなどの痛みを生じます。最近では、パソコンを使用して仕事する方も多く、また長時間下を向いてスマートフォンの使用することもこりの原因になります。いつも同じ側でカバンを持っているといった日常のちょっとした癖、冷房などの冷えから血行が悪化するなども肩こり発症に影響します。
診断
症状について問診で伺います。次に触診で僧帽筋の状態を確かめます。圧痛・筋緊張・肩関節可動域を調べ、頸椎疾患の有無を確認する神経学的診察により診断します。必要があればX線検査、血圧測定などを行うこともあります。
肩こりは整形外科的な原因以外でも起こることがあります。当院では、頸椎や頭蓋内の疾患、循環器疾患、眼疾患、耳鼻咽喉疾患などの症状として起こっている可能性も考慮して慎重に見極めます。
肩こりの治療と予防
薬物療法で痛みを鎮め、運動療法や物理療法によって根本的な痛みの緩和を図ります。痛みが強い場合は安静も必要です。なお、原因疾患がある場合には、その治療も不可欠です。また、生活習慣などによって再発しやすいため、予防も重要になります。
肩こりの治療
- 薬物療法(湿布薬、筋弛緩薬など)
- ストレッチ
- マッサージ療法
- 温熱療法
- 運動療法
予防
- 長時間同じ姿勢が必要な際にはこまめに休憩してストレッチを行う
- 肩を冷やさない
- ホットタオルなどで肩を温め、血行を改善させる
- 軽い運動を習慣にする
- 夏もできれば毎日バスタブに浸かって芯まで温まる
四十肩、五十肩について
40・50歳代に肩の疼痛と可動域制限を起こす頻度が高いため、昔から四十肩・五十肩と呼ばれていますが、これは俗称です。医学的にはさまざまな原因や疾患によって起こっている状態で、正確な診断がされないと適切な治療ができず、効果的な改善につながらなくなってしまいます。そのまま放置すると凍結肩という腕が上がらなくなる状態になる可能性もありますので、当院までご相談ください。
四十肩・五十肩の主な症状
- 肩が痛い
- 腕が上がらない、途中までしか上がらない
- 寝返りで強い痛みが起きて目が覚めてしまう
- 着替える、高所に手を伸ばすなどで痛みが起こる
- 背中に手が回らない
肩関節の周囲に起こる炎症によって痛みが生じているケースが多いのですが、上腕二頭筋長頭腱炎、石灰沈着性腱板炎、肩腱板断裂などの可能性もあるため、問診、触診、X線検査、超音波検査などにより診断して適切な治療につなげます。
症状や治療内容の変化
四十肩・五十肩は、痛みが起こりはじめた急性期、腕が上がらないなどの慢性期、治りはじめた回復期に分けられます。
急性期(疼痛期)
強い痛みがある時期です。最初、肩の違和感や重さ、だるい感じが現れ、痛みが少しずつ強くなります。痛みが起こると筋肉が痙攣してさらに痛みを強くなります。就寝中に痛みで目覚めて眠れなくなるほど激しい痛みを起こすこともあります。炎症による痛みが起きているため、無理に動かすと悪化してしまいます。安静を保って炎症や痛みを解消させるための治療が必要です。
ご注意いただきたいのは、炎症が強い場合は冷やす必要があり、炎症が治まったら温めることで筋肉をほぐす必要があるということです。状態を見極めて適切な治療とケアを受けることが重要です。
慢性期(拘縮期)
肩関節の可動域の制限があって、腕が上がらないといった症状があります。肩を冷やすことは厳禁です。肩を温めて血行を改善させることを心がけます。無理のない範囲で動かすことが重要です。リハビリテーションでストレッチなどのセルフケア指導を受けて、しっかり行えるようにしましょう。なお、横になると肩への負担が増えて、夜中に強い痛みで目が覚めてしまうこともあります。寝返りなどで強いダメージを受けないよう、クッションや抱き枕などで肩に負担がかからないようにしてください。
回復期
ある程度動かせるようになったこの時期には、可動域訓練などのリハビリテーションが特に重要です。肩関節の柔軟性を取り戻せるかどうかは、この時期の過ごし方で変わってきます。理学療法士の指導を受けて、無理のない適切なプログラムをしっかり行うことで最大限の改善を目指します。
治療
薬物療法
炎症が強い場合には、短期間のステロイド投与が有効です。関節をスムーズに動かすためにはヒアルロン酸注射も効果が見込めます。
慢性期・回復期の運動療法
急性期に動かしてしまうと悪化してしまいますが、慢性期・回復期には状態に合わせた無理のない範囲の運動療法を行わないと肩関節の可動域が狭くなって痛みが解消しても動かなくなってしまいます。慢性期には様子をみながら少しずつ、回復期には徹底したリハビリテーションを行うことが重要です。
なお、運動療法は理学療法士と行うリハビリと、ご自分で行うセルフトレーニングがあります。また、痛みが起こった場合にするトレーニング、行うことで痛みが和らぐ場合に行うトレーニングなど、様々なものがあります。当院では医師の指導のもとで、理学療法士が運動の患者様の状態に合わせて施行して、セルフケアに関しても丁寧にご指導しています。
物理療法
マイクロ波・近赤外線・低周波などによる物理療法によって、痛みや筋緊張の緩和、血行改善、関節への負担軽減などにつなげます。